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岸・笹川・児玉と統一教会の繋がりを暴いた「フレーザー委員会」の報告書がウェブに公開される

今でこそ岸信介、笹川良一、児玉誉士夫と統一教会=統一協会(現:世界平和統一家庭連合)の関係は広く知られているが、これを動かぬものにしたのが、米下院で開かれた国際関係委員会国際機構小委員会(通称フレーザー委員会、ドナルド・M・フレーザー委員長)だろう。

Donald M. Fraser

コリアゲート事件をきっかけに、韓国による対米議会工作を追求する目的で米下院外交委員会の委任により始まったフレーザー委員会は、1977年4月から78年10月の期間に全米二十八州、十一ヵ国で行われた千五百を超えるインタビューと、政府機関や私的組織などから集められた数千の文書が分析され、出された召喚状は百二十三にのぼり、三十七人の証人が公聴会で証言したほどの規模であったという。

調査範囲は、韓国と米国のあいだの政治・経済・軍事・情報などに関する広範なもので、その集大成として最終報告書「韓国の対米関係に関する調査」が78年10月31日に議会に提出された。この中で統一教会については、文鮮明を頂点とし、宗教のみならず政治や経済などあらゆる分野で国際的に活動する「文鮮明機関」(Moon Organization)と規定された組織の一部として論じられている。あくまで統一教会がメインにあり、他は教団の偽装団体と見做すことが多い日本とは若干視点が異なる。

岸や笹川らと文鮮明機関(文組織)の繋がりは、文機関の一つである韓国文化自由財団(KCFF)元幹部のロバート・W・ローランドという人物が公聴会で証言しており、当時の日本の国会でも取り上げられている。古い話ではあるが、わりと最近インターネットに報告書の原文と公聴会の会議録が公開されたので、せっかくだから取り上げてみたい。

フレーザー委員会の報告書は450ページほどもある膨大なものだが、「Conclusions and Recommendations」(結論および勧告)という章が設けられており、ここで大凡の内容を知ることができる。下に貼った画像が報告書の表紙と「結論および勧告」があるページで、更にその下の引用文が「結論および勧告」の日本語訳になっている。こちらは当時の『朝日ジャーナル』(78.12.22)を参考にした。

「Conclusions and Recommendations」(結論および勧告)の日本語訳。

結論および勧告

文組織についての当小委員会の調査結果は以下のように要約されよう。

(1) 文組織が主催する統一教会その他多数の宗教・非宗教団体は、実質的にひとつ国際組織を形成している。この組織は、その関連団体を相互に交流させることができること、および人的・財政資産を国境をこえて、また営利事業と非営利団体の間で、自由に移動することができることに大きく依拠している。

(2) 文組織は文鮮明によって描かれた目標の達成を企図しており、文鮮明は、それらの目標追求のために文組織が企てる経済的、政治的、宗教的諸活動にたいして実質的な統制力を握っている。

(3) 文組織の目標の中には、教会と国家の分離が廃止され、文鮮明とその信徒によって統治される世界政府の樹立が含まれている。

(4) これらの目標追求のために文組織は、成功の度合いはまちまちだが、米国や他国の企業および他の非宗教的諸機関に対する運営権の獲得ないし確立を企てるとともに、米国において政治活動を展開してきた。これらの活動の中には、韓国政府を利すため、あるいは米国の外交政策に影響を与えるために企てられたものもある。

(5) 文組織は、独自の目標を追求しながら、同時に韓国政府の利益を促進し、時には韓国の政府諸機関や要人と協力して、あるいはその指示を受けてこれを行った。文組織は、いく人かの韓国政府要人と互恵的結びつきを保持していた。

(6) 文組織は、表向きは韓米関係推進のための非営利財団としてKCFF(韓国文化自由財団)を設立したが、組織自体と韓国政府の政治的・経済的利益を助長するためにKCFFを利用した

(7) 文組織は、米国の上院議員や下院議員、大統領、その他の著名人の名前を広範に利用して募金活動を行い、文組織自体と韓国政府のための政治的影響力を醸成した。

(8) 文組織の一企業は、韓国における主要な防衛契約業者であり、M-16型ライフル、対空砲その他の兵器の生産に関与している。

(9) 文組織の代理人は、米企業から韓国製のM-16の輸出許可を取りつけようとした。M-16は、米国政府認可の共同生産協定にもとづいて製造されており、米国政府はM-16の生産を韓国政府の独占管理下に置いている。それにもかかわらず文組織の代表が―明らかに韓国政府の代理として―協定延長交渉に現れた。

(10) 文組織は、教会員の名前で株式を買うのに使う資金の出所と見せかけて、ディプロマット・ナショナル・バンクの過半数の株式を手に入れようと企てた。

(11) 文組織は、自らの政治・経済活動を支えるために教会その他の免税団体を利用した。

(12) 文組織の目標や活動の多くは合法的、適法的ではあったものの、文組織が米国の税、移民、金融、通貨関係の各法規、外国人代理人登録法、ならびに慈善事業を装った詐欺行為に関する州や地方の法律を計画的に犯していたこと、またこれらの法律違反が俗世界の権力の獲得という文組織の全目標と関係があることを示す証拠があった。

aj19781222

※フレーザー委報告書からは (11) が抜けており朝日ジャーナルは繰り上げて書いている。

少し補足するとフレーザー委員会では他に、①金大中事件に韓国中央情報部(KCIA)が関与したこと。②ソウル地下鉄建設1)日本からの借款があったの際に車両価格の水増しがあり、日韓の政界にリベートが流れたこと。③朴正煕政権下で不正な資金工作と蓄財があり、日本の政財界もこれに絡んでいたこと。④文鮮明機関と韓国政府・KCIAの結びつきは複雑かつ緊密であり、両者のパイプ役を四人の韓国軍将校が担っていたこと(うち一人が文鮮明の側近になる朴普煕〔パク・ポヒ〕)。⑤文機関が、金鍾泌や朴鍾圭など韓国政府内に多数の支援者を持っていたこと。⑥文機関のアメリカでの活動資金や人員の多くが日本から送られていること、などが明らかにされた2)要点のチョイスは『前衛』(79.3)(79.5)、『朝日ジャーナル』(78.12.15)(78.12.22)を参考にした

そして、下の英文が岸・笹川・児玉と統一教会=勝共連合の繋がりが暴露された聴聞会の会議録を抜粋したもの。たったこれだけだが、この証言によって件の大物三人と統一・勝共が癒着していた事実が動かぬものとなったわけだ。

In July 1967, Moon held an organizational meeting at Lake Yamanaka, near Mount Fuji, for the purpose of organizing the World Anti-Communist League. According to my Japanese sources, two prominent figures at that meeting were Yoshio Kodama and Ryoichi Sasagawa, powerful leaders in the extreme rightwing of the ruling Liberal Democratic Party.

Kodama, a staunch supporter of Chung Hee Park, is currently under indictment in the Japanese Lockheed case. Kodama’s close associate, Sasagawa, headed Genri Undo, the Japanese arm of the Unification Church in the late 1960’s.

WACL was formed in Korea in January 1968. Former Japanese Prime Minister Kishi joined Kodama and Sasagawa in forming the Japanese branch of WACL in April 1968. Kishi has been an open and staunch supporter of Moon’s International Federation for Victory Over Communism, and his U.S.-based Freedom Leadership Foundation.

All three of these organizations have been closely linked in their worldwide anti-Communist efforts. As of late, however, some of the Moon leadership have been stating that IFVOC has broken with WACL.

In 1974, Sasagawa formed the World Karate Federation and became its first president with Jhoon Rhee, coincidentally, as one of his officers.

Activities of the Korean Central Intelligence Agency in the US :Internet Archive

上の証言にある「World Anti-Communist League = WACL」は世界反共連盟、「Genri Undo」は原理運動、「International Federation for Victory Over Communism = IFVOC」は国際勝共連合、「Unification Church」は統一教会、「Liberal Democratic Party」は自由民主党を、それぞれ指している。

この証言だと、会合が開かれたのは山中湖(Lake Yamanaka)となっているが、これに関しては本栖湖だったというのが通説になっており、委員会で証言したローランド氏が、同じ富士五湖の山中湖と間違えた可能性も考えられる。しかし、図らずも当時日本の国会で、このローランド証言を用いて岸信介と統一教会の関係を質した議員が、同じく山中湖で会合があったと述べており、インターネットアーカイブにアップロードされた会議録の信憑性を高める結果にもなっている。

本栖湖会議の会場は、本栖湖畔にある全国モーターボート競走会連合会の水上スポーツセンター会議室で、会議には藤吉男(東京都モーターボート競走会会長、笹川の側近)、白井為雄(日本青年講座事務局長、児玉の側近)、市倉徳三郎(護国団顧問)、山下幸弘(天照義団)、畑時夫(庶民の生活を守る会)らが出席(朝日ジャーナルより)。

この本栖湖会議とは「第一回アジア反共連盟結成準備会」だったのだが、「アジア反共連盟」は結局、最終的な合意が得られなかったため結成には至らず、翌68年に笹川良一を名誉会長、久保木修己3)日本統一教会の初代会長を会長として、本栖湖会議の精神を受け継いだ「国際勝共連合」が結成される。なお、問題の証言にもあるように全日本空手道連盟の会長に就任した笹川は、これを理由に、国際勝共連合の名誉会長職を退いたとされる。共産圏からの参加もある国際的な団体のトップが、片方で反共を掲げる組織に属していてはマズいとの理由である。また、久保木は後に、”国際”勝共連合であるのに活動が国内にとどまっている点に疑問を感じ、すでに国際的な運動を展開していた「世界反共連盟」(WACL〔ワクル〕)に接近する。

wacl19700920

WACL世界大会(1970年9月20日 日本武道館)『久保木修己 講演・論文集』より

久保木の著書によると、WACLはもともと、韓国の李承晩と台湾の蒋介石の呼びかけで発足したアジア人民反共連盟(APACL〔アパクル〕)という組織を前身に持ち、このAPACLを世界規模に発展させたのがWACLだという。統一教会は、タイのバンコクで開かれたWACL第三回大会へのオブザーバーとしての参加が最初で、後に、日本での大会開催を取りつけた久保木がWACL日本支部長に就いたとのことだ。そして、WACL日本大会では推進委員長を岸信介、大会総裁は笹川良一が務め、勝共連合のほか、神社本庁や日本郷友連盟なども連携した(朝日ジャーナル)。

次の投稿では、同じく岸・笹川・児玉と統一教会・勝共連合の繋がりについて書かれた、もう一つの重要なファイルを取り上げてみたい。

【リンク】
Investigation of Korean-American relations: report of the Subcommittee on International Organizations of the Committee on International Relations, U.S. House of Representatives : Internet Archive

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脚注   [ + ]

1. 日本からの借款があった
2. 要点のチョイスは『前衛』(79.3)(79.5)、『朝日ジャーナル』(78.12.15)(78.12.22)を参考にした
3. 日本統一教会の初代会長