eyecatch5589

第二次安倍政権で成就した統一教会(家庭連合)の3つの悲願

宗教団体が政治に関与して特定の政党や候補を支援する目的のひとつに、その見返りとして、彼らの思想や主張を政治に反映させることがあるが、現政権を選挙などで支援した統一教会(現:世界平和統一家庭連合)は、実際のところ施策に影響を及ぼしたのか?

自民党のなかでも右寄りの安倍政権と、公安からも右翼団体として認められる勝共連合をはじめとした統一教会系の政治団体は、掲げる政策や主張が極めて近い。でも、それらは大抵が統一教会に限らず、保守派・右派とされる人や団体であれば同じように主張していることでもあるので、現実の政治に統一教会の影響を外から見出すのは難しい。

では、どうやって安倍政治の中から統一教会の影響を探ればよいのかとなったとき、まず出来るのは、一般的な右派がしない主張や提言で、安倍政治と統一教会に共通するものを探すことになる。

そこで、統一教会が関連団体などでしている主張を以下に挙げてみる。
.

  1. 共産主義に反対(勝共思想の啓蒙)
  2. 改憲(自主憲法制定)に賛成
  3. 集団的自衛権の行使に賛成
  4. 武器輸出三原則の見直しに賛成
  5. 非核三原則の見直しに賛成
  6. スパイ防止法の制定に賛成
  7. 日本版NSCの設置に賛成
  8. 徴兵制の導入に賛成
  9. 原発の維持に賛成
  10. 選択的夫婦別姓に反対
  11. ジェンダーフリーに反対
  12. 児童ポルノの規制強化に賛成
  13. 青少年健全育成法に賛成
  14. 子宮頸がんワクチンに反対(純潔の推奨)
  15. 日韓トンネル建設の提言

概ねこんな立ち位置になる。そして、ここから一般的な右派・保守派の主張とは異なる統一教会特有のものを選び、安倍政権下で実施された事と突き合わせて合致するものを探し、安倍政治から統一教会の影を洗い出してみる。

まず、1~ 11 までは典型的な右派・保守派の主張と変わらず、程度の差こそあれ、どれも右寄りのスタンスをとる人や団体であれば同じように唱えているから、たとえ安倍政権で決まったとしても何か証拠がない限り、そこに統一教会の影響があったと決めつけるのは難しい。その中でも、1の反共と6 のスパイ防止法に関しては、統一教会が「国際勝共連合」と「スパイ防止法制定促進国民会議」という団体まで立ち上げて優先的に取り組んできた事柄だが、もはや反共は政策的な俎上には載らないし、スパイ防止法についても、特定秘密保護法(2013年成立、2014年施行)がこれと同等の法律と解釈される場合もあるが、同国民会議では別途スパイ防止法が必要だと訴えているので、教団の悲願が達成されたとまでは言えない。

児童ポルノ規制

12の児童ポルノ規制の推進と 13の青少年健全育成法も、1,6と同じく統一教会が特に熱心に取り組んできた問題。違いとしては、1と6は右派・保守派が皆同じ立場をとるのに対し、12と13は右派でも意見が分かれ、一枚岩にはなっていないところ。主観的な感想だと、この二つは右派でも若年層に規制反対派が多く、左派のなかにも賛否があった印象を受ける。

下に、統一教会の児童ポルノ規制強化にかける意気込みが分かる事例として、系列日刊紙「世界日報」の社説の見出しをいくつか挙げてみる。
.

  • 児童ポルノ漫画/制作そのものを禁止せよ(2006年12月29日付社説)
  • 児童ポルノ/所持も漫画も法改正で禁止を(2007年7月7日付社説)
  • 児童ポルノ防止/「所持禁止」を早く実現せよ(2008年11月15日付社説)
  • 児童ポルノ/処罰法の改正急ぎ増加阻止を(2009年8月16日付社説)
  • 都青少年条例/漫画の児童ポルノ規制は当然(2010年3月27日付社説)
  • 児童ポルノサイト/迅速な遮断で被害防止を(2010年6月2日付社説)
  • 児童ポルノ規制/子供保護の観点で厳しく(2010年11月29日付社説)
  • 児童ポルノ/地方の規制強化を歓迎する(2011年3月6日付社説)
  • 京都府条例/国も児童ポルノの規制強化を(2011年10月9日付社説)
  • 児童ポルノ/法の欠陥放置は許されない(2012年9月9日付社説)
  • 児童ポルノ/撲滅に所持禁止は不可欠(2013年3月10日付社説)
  • 児童ポルノ、スマホ使用の危険啓蒙を(2014年3月24日付社説)
  • 児童ポルノ規制強化の歩み止めるな(2014年6月8日付社説)
  • 児童ポルノ、子供を守る決意新たにしたい(2015年6月30日付社説)

これでも、気が向いたときにウェブ版から記録していた程度だが、児童ポルノ規制にかける教団の並々ならぬ思いは伝わってくる。おそらく、ここまで執拗に規制強化を訴えている新聞は他にない。これ以外にも、統一教会は「ピュララブラリー(純潔ラリー)」と呼ばれるデモの際にも規制強化を呼びかけていたりする。こんなことから、児童ポルノ規制の訴えは1~15の中でも、とりわけ統一教会色の濃い主張といえる。

さて、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)は安倍政権下の2014年6月に改正、同年7月に施行されている。これによって児童ポルノの単純所持にも罰則が設けられるなど規制が強化された。この改正では、反対意見が多かったマンガやアニメなどの創作物は対象から除外されたが、曲がりなりにも教団の悲願がひとつ実現したことには違いない。なお、青少年健全育成法は今のところ法案が成立した等の具体的な動きは見られない。

子宮頸がんワクチン

あまり知られていないが、これは統一教会が近年、最も熱心に取り組んでいる運動で、教団の関連団体では頻りに子宮頸がんワクチンの“危険性”を訴え、接種の中止を呼びかけている。世界日報でも特集を組むなどして絶えず報じ1)世界日報 | 記事一覧 子宮頸がんワクチン被害、何かあれば号外まで出すほど。そして、この問題は1~13と違って一般的な右派・保守派がほとんど言及しておらず、極めて統一教会的な主張になる。
.

上のビラは、ピュアラブラリー(純潔ラリー)と呼ばれるデモを主催する統一教会の関連団体「PLAジャパン(Pure Love Alliance Japan)」が配布したもの。見てのとおり、児童ポルノ規制と子宮頸がんワクチンの問題を最優先に訴えている。

子宮頸がんは性交渉によって若年層に感染しやすいことで知られるが、これを防ぐワクチンに統一教会が反対する理由として、まずあるのは貞操観念を汚すからというもの。要するに「純潔」を推奨している彼らにとって目障りだという不純な動機から反対している。

貞操感損なう子宮頸がんワクチン PLA Japan(PDF)

さて、このワクチンに関しては安倍政権下で「極めて異例」(NHK)の動きが起きている。子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)は2010年から国や市町村からの助成を受けて接種できるようになり、2013年4月からは定期接種の対象にも追加されたのだが、そのわずか2ヶ月後の6月に急遽、厚労省が全国の自治体に向けて接種の推奨中止を呼びかけたのだ。これにより、それまで70%ほどあった接種率が1%未満にまで低下した。

当時の報道 ※リンク切れ

推奨中止に至った理由は副反応(=副作用)の報告があったからで、実際、子宮頸がんワクチンと他のワクチンを比較した場合、重篤な副反応の発生数は前者のほうが僅かに高いという2)子宮頸がん 接種めぐる議論なお:朝日新聞デジタル。ただし、これについては「ウェーバー効果」3)新たな予防接種を開始した直後に副反応の報告数が一時的に増える現象の可能性も指摘されており4)子宮頸がんワクチン論争 はっきり示された専門家の総意 小児科学会が投じた決着への一石 WEDGE Infinity、国内で行われた大規模疫学調査の結果では、副反応症状とワクチンの関連性は認められないとの結論が出ている5)【速報】HPVワクチンと「副反応」に関係がなかったことが明らかに!~「名古屋スタディ」の成果~

この日本の決定については、WHO(世界保健機関)も、本来なら予防できる子宮頸がんのリスクに日本の若い女性が晒されているとして警告。国内でも日本産婦人科学会が、ワクチン接種の早期の勧奨再開を強く求める声明を繰り返し発表している6)声明:日本産科婦人科学会 平成29年12月9日7)声明:日本産科婦人科学会 平成29年8月28日8)声明:日本産科婦人科学会 平成29年1月13日9)声明:日本産科婦人科学会 平成27年8月29日。ちなみに、子宮頸がんには国内で年間1万人以上が罹患し、約2900人が亡くなっている。

もちろん、この不可解な決定に統一教会の差配があったとまでは言い切れない。しかし、前の投稿でも触れたように、安倍政権には選挙支援などを統一教会から受けた借りがあり、その統一教会が最も望むのが子宮頸がんワクチンの撲滅で、現に、極めて異例なかたちでワクチン接種の推奨中止が言い渡されたとにより接種率はゼロ近くまで落ち込み、教団の悲願がひとつ実現しているのは紛れもない事実だ。

日韓トンネル

15の日韓トンネル建設の提言も、統一教会とその関連団体以外ではまずしない。このトンネルは、文鮮明が提唱した東京からロンドンまでを高速交通ネットワークで結ぶ「国際ハイウェイ」10)日韓トンネルによる地域総合開発 ‐ 政策提言 ‐ | 日韓トンネルプロジェクトを推進する国際ハイウェイ財団 “東京からロンドンまで高速交通ネットワークで連結しようとする「国際ハイウェイプロジェクト」構想は1981年11月、韓国・ソウルで開催された第10回「科学の統一に関する国際会議」(ICUS)において提唱されたものである”という構想の一部で、日本と韓国の間は海底トンネルで繋ごうというもの。当然、費用や技術的な問題等を踏まえれば非現実的な計画で、日本が国を挙げて参画することは有り得ない。だが、この事業は実際にトンネルを完成させることが目的ではなく、カネを集めるための口実に使われているのが実態なので、政治家が公の場でこれに言及したり、関連イベントに参加するだけでも教団へのフォローになる。

下の引用は、統一教会の元信者による証言。

「珍味売りや“難民救済”のカンパで戸別訪問をしたとき、トンネルのためと思ったことがあった」

「霊感商法で土地を売却させて献金してもらうとき、こういうことに使われるんですよという一つに、日韓トンネルの話をしたことがある」

「統一教会の信仰をやめる気になったものの、最後まで『日韓トンネル』のことが気になっていた。トンネルを作り、国際ハイウェイができれば、地上天国ができると信じていたからだ」

『朝日ジャーナル』1988年5月27日号 – ルポ「日韓トンネル」というブラックホール(有田芳生, 藤森研)より

では、安倍政権で何らかの政治的な動きがあったのかといえば、実は、安倍首相が2013年10月にトルコを訪問した際に気になる発言をしている。以下は、その発言を産経新聞が報じたもの。

 安倍首相は海峡を横断する鉄道構想が1860年からあったことや、事業に関わった大成建設の日本人技術者の苦労話を紹介しながら、次のように語った。

「さあ、次は東京発イスタンブール、そしてイスタンブールからロンドンにつながる新幹線が走る夢を一緒に見ようではありませんか!!」

なんとアジア・欧州横断鉄道構想をぶち上げたのだ。しかも日本の優れた技術の象徴といえる新幹線を走らせるという。こんな壮大な「夢」に対し、聴衆からは大きな拍手と歓喜の口笛が起こった。

(略)

問題は東京とイスタンブール間だ。日本は島国だから海を越えて大陸に渡る必要がある。自然な成り行きとして対馬海峡を挟んで日韓が地下トンネルでつながることになる。福岡までの東海道新幹線を延伸して壱岐島と対馬を経由し、韓国の釜山をつなぐルートが順当だ。

【酒井充の政界××話】安倍首相がトルコで語った「夢」- MSN産経ニュース (ウェブ魚拓)

産経の記事で言及されている、壱岐島と対馬を経由して釜山へつなぐルートも、トンネル内に高速鉄道を通すのも統一教会が宣伝している計画と同じ。安倍首相のこの発言が教団や信者にとってどんな意味を持ってくるのかは、元信者の証言からも容易に想像できる。

この日韓トンネルに関しては、児童ポルノ規制や子宮頸がんワクチンのように、実際に国からのアクションがあったわけではないものの、総理大臣がお墨付きを与えた格好になる問題の発言は、信者向けのメッセージとなり教団を後押しする結果になり得る。

また、これに呼応するかのように教団側にも動きがあり、2016年11月に家庭連合総裁の韓鶴子氏が来日して、佐賀県唐津市にあるトンネルの試掘現場をはじめて視察し、信者に発破をかけている。

pt161119

PeaceTV 週刊ブリーフィング(2016年11月19日)より

以上、児童ポルノ規制の強化と、子宮頸がんワクチン接種の推奨中止が、第二次安倍政権で実現した統一教会の悲願ということになる。日韓トンネルの件は安倍首相が言及しただけということもあり加えていない。残る一つは性格が少し異なる問題なので以下に切り分けた。

教団名の変更

統一教会が教団名を「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に変更したこのは2015年8月。それまで名称変更を認可してこなかった文化庁が一転してこれを認めた背景には、当時、文化庁を所管する文部科学省の長であった下村博文文科相(当時)の暗躍があったという11)鈴木エイト(ジャーナリスト) やや日刊カルト新聞主筆さんのツイート 12)カルト被害に備えるために 統一協会の「今」~その知られざる実態 鈴木エイト(『やや日刊カルト新聞』主筆) 2018年4月1日 | キリスト新聞社ホームページ。そして、これは選挙を控えた安倍政権の対策、つまり教団への便宜だったのではないかとの見方がある13)安倍改造政権支える宗教 集団的自衛権で創価学会とはすきま風 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版

8001c

文科省大臣室にて、下村大臣(当時)と世界日報主筆の木下義昭氏(『ビューポイント』より)

下村議員といえば、予てよりいくつかの新興宗教団体との関係が噂されるが、世界戦略総合研究所の会長が開いた出版記念会に駆けつけたり、世界日報の主筆を大臣室に招くなど統一教会との親密な様子も窺える。

教団の機関誌によると、名称変更は故・文鮮明の指示によるもので、日本以外の国にある教会では変更を済ませている模様。教団にとっては名称を変えることで、国内においては霊感商法のイメージが付きまとう「統一教会」という名を名乗らずに勧誘できるメリットがある。もし勧誘員が正直に「家庭連合」と名乗ったとしても、霊感商法で知られる宗教団体だと気づく人はまだ少ない。これが第二次安倍政権で実現した3つ目の悲願になる。

言うまでもなく、集団的自衛権行使の容認や国家安全保障会議(日本版NSC)の設置などの他の施策にも、統一教会(家庭連合)の影響があった可能性は残るが、右派・保守派なら誰もが主張しているようなことを挙げて、あれもこれも統一教会の差し金だと言ってみたところで説得力に欠ける。そんなわけで、統一教会特有の主張をピックアップし、これを安倍政治と突合し、教団の影を炙り出してみた。ただし、どう受け取るかは人それぞれ。

» Home

脚注   [ + ]

1. 世界日報 | 記事一覧 子宮頸がんワクチン被害
2. 子宮頸がん 接種めぐる議論なお:朝日新聞デジタル
3. 新たな予防接種を開始した直後に副反応の報告数が一時的に増える現象
4. 子宮頸がんワクチン論争 はっきり示された専門家の総意 小児科学会が投じた決着への一石 WEDGE Infinity
5. 【速報】HPVワクチンと「副反応」に関係がなかったことが明らかに!~「名古屋スタディ」の成果~
6. 声明:日本産科婦人科学会 平成29年12月9日
7. 声明:日本産科婦人科学会 平成29年8月28日
8. 声明:日本産科婦人科学会 平成29年1月13日
9. 声明:日本産科婦人科学会 平成27年8月29日
10. 日韓トンネルによる地域総合開発 ‐ 政策提言 ‐ | 日韓トンネルプロジェクトを推進する国際ハイウェイ財団 “東京からロンドンまで高速交通ネットワークで連結しようとする「国際ハイウェイプロジェクト」構想は1981年11月、韓国・ソウルで開催された第10回「科学の統一に関する国際会議」(ICUS)において提唱されたものである”
11. 鈴木エイト(ジャーナリスト) やや日刊カルト新聞主筆さんのツイート
12. カルト被害に備えるために 統一協会の「今」~その知られざる実態 鈴木エイト(『やや日刊カルト新聞』主筆) 2018年4月1日 | キリスト新聞社ホームページ
13. 安倍改造政権支える宗教 集団的自衛権で創価学会とはすきま風 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版