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仏教系の新宗教「辯天宗」の施設で起きた統一教会信者の変死事件

随分昔の話になるが、統一教会(世界基督教統一神霊教会、現:世界平和統一家庭連合)の学生サークルである原理研究会の合宿で奇妙な変死事件が起きている。次の引用は、その事件について書かれた週刊誌の記事から。

 原理研究会といえば、入会した学生の親たちが三年前、「わが子を返せ」と「父母の会」まで結成した“過激派”の宗教団体――。

 「世界統一教会」を推進母体に、理想社会建設のためにあらゆる宗教、哲学、科学の統一を唱えているが、その合宿で、ナゾの変死事件が起きた。

 死んだのは関西大学法学部一年生の山田○○君(一八)。山田くんは、七月十日から弁天宗大阪本部(大阪府茨木市)の宿泊施設「生命の貯蓄クラブ」で行われていた原理研究会の特別修練に参加していた。そして十五日、近くの病院に死体となって運び込まれたのだ。

 その死体は全身傷だらけだった。右大腿部は大きく黒ずんでいた。背中には刺したようなあともあった。顔にまで傷があった。遺体解剖の結果、胃の中はからっぽで、死亡の三日前から何も食べていないことがわかった。直後の死因は全身衰弱だが、全身打撲が死を早めた、と断定された。

  二階の窓から落ちた?

 茨木署では、合宿の責任者、田口○○伝道師(二三)らを呼んで事情を聴取した。

 調べに対して田口伝道師らは「不審な点は何もない」と終始主張し、山田君の死に至るまでの経緯をこう語っている。

 合宿が始って五日目の十日ごろから講義中に奇声を出すなど、様子がおかしくなり、十二日夜からは覚えていた空手で暴れはじめた。そこで班長五人が手足をしばりつけて、大広間に入れて監視をつづけた。ところが十三日夕方、窓カラスを破って二階から飛降りた。このとき、とめようとした班長もいっしょに落ちて、顔に七針の裂傷を負ったが、山田君は手足などに軽いケガをしただけ。さらに翌日、こんどは廊下側の窓ガラスを破って廊下にころげ落ち、手足にケガをした。十五日午前四時ごろ寝ていた山田君の体が冷たくなっているのに気づき、湯であたためたあと、午前六時半ごろ近くの病院に運んだが、すでに死亡していた――というのだ。(以下略)

週刊朝日1970年7月30日号「原理研の修練会でナゾの変死 “荒修行”に口を閉ざす伝道師」より

死因もさることながら、この事件からは原理研究会の合宿が、なぜ仏教系の新宗教である「辯天宗=弁天宗」の施設で行われていたのかという疑問が湧く(記事では触れられていない)。方や仏教系、もう一方はキリスト教系を称する宗教団体で接点は見出せない。何が両者を結び付けたのか? その理由を知る手がかりは意外なところに転がっている。

下の画像は、辯天宗が本部を構える大阪府茨木市西穂積町7-41に、Googleのストリートビューでフォーカスしたもの。階段を挟んで「世界平和は茨木の慰霊塔より」「人類の幸福は心の掃除から」と彫られた二本の石碑があり、そこに笹川良一の名を確認できる。さらに、地図を上から見ると敷地内に笹川の銅像があることもわかる(Googleマップ)。もちろん、ここで取り上げる笹川良一といえば、あの笹川良一しかいない。

山口文憲著『日本ばちかん巡り』(筑摩書房, 2006/12)によると、笹川は辯天宗の大物信者として知られ、大阪本部の建設にあたって教団に十万坪の敷地を寄贈したのだという。その敷地の一部は今でも笹川の支配地で、本部は教団領と笹川領が混然一体となった状態なのだと教団関係者の話としても書かれている。

知っての通り笹川といえば統一教会との関係も深く、国際勝共連合の立ち上げに参画し、同連合の反共運動(勝共運動)を支援したことでも有名。自らが所有する施設を同連合に提供していた前例もあるので、懇意にしている原理研究会に、自らが寄贈した土地に建つ施設を使わせたとしても不思議ではない。たとえ辯天宗側が快く思っていなくとも、笹川の意向では無下に断ることもできないはず。

崔翔翼(西川勝)の釈放を手助けし、ソウルで行われた合同結婚式に駆けつけて祝辞を述べるほど勝共運動にのめり込んでいた笹川だが、信者から統一原理を学ぶよう勧められても興味を示さなかっただけに、元より、宗教としての統一教会に関心があったわけではないと思われる。反共運動のために教団を利用したと指摘されることもある。そして、昭和47年2月に(実践面での)反共運動との絶縁を突如宣言し、勝共連合の名誉会長を辞任している。

生前、笹川は文鮮明について、釈迦はインド人だしキリストもイスラエル生まれなのだから、出身で評価すべきではないと語っていたという。「世界は一家、人類は皆兄弟」と唱えた笹川らしい態度ではある。

tokyo19680313

東京新聞 1968年3月13日付

上の切り抜きは、笹川が昭和43年に韓国ソウルで行われた430組合同結婚式に出席したことを伝える新聞記事。招待されてもいないのに勝手に押し掛けて祝辞を打ったなんてエピソードもある。

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